抄録
前頸部腫瘤を主訴として来院した,非常に稀な疾患である喉頭甲状軟骨肉腫を経験した。病理組織検査の結果はlow gradeの軟骨肉腫であった。手術は,まず,皮膚から甲状軟骨板までを一塊になるように切除・摘出した。再建については,喉頭の機能温存を中心に考え,喉頭の前後方向への潰れと内喉頭筋(特に甲状披裂筋)が移植片軟部組織と癒着して起こる筋収縮の制限を最小限にとどめるため,自家鼻中隔軟骨を採取し甲状軟骨切除後欠損部にチタンワイヤーとフィブリン接着剤で固定した。前頸部切除部の再建材料として遊離腹直筋皮弁を選択し,吻合血管には右上甲状腺動静脈を使用した。術後,移植片の生着は良好で,危惧された声門付近の狭窄も特に問題なく,約2週間後には経口摂取開始したが誤嚥などの問題もなく約1カ月で退院した。術後3年半以上経た現在も再発はなく,機能や外見上も特に問題点はみられていない。治療法を検討するうえで,参考にしうる報告の数も過去において決して多いとは言えず,特に術式の決定に迷ったことは否定できない。できれば今後も,世界的に数多くの症例報告を蓄積し,より普遍的な治療法(特に術式)の選択が可能になることが望まれる。