抄録
瘢痕性喉頭気管狭窄は,時に非常に難治性で,治療に苦慮することも多い疾患である。今回我々は1989年2月から2000年2月までに慶應義塾大学病院耳鼻咽喉科で治療した瘢痕性喉頭気管狭窄症例11例について検討を行った。誘因は,喉頭内腔手術操作によるものが多く,手術回数は平均で14.1回にも及んでおり,治療の難しさをうかがわせた。我々は治療としてTチューブを積極的に用いてきたが,今回検討した症例でも8例に使用しており,どの症例も抜去後瘢痕性の狭窄は起こしておらず,6例で気管口閉鎖が可能で,瘢痕性の喉頭気管狭窄に対して,6カ月程度のTチューブの留置は,大変有効と思われた。また,1996年に我々が報告して以来(日気食会報,47: 124-128, 1996)症例によって用いている,上方充填型のTチューブは,声帯を越えて声門上まで留置でき,しかもチューブ上方が閉鎖端になっており誤嚥がない。また,チューブ上方は中空でなく充填されているために内腔の保持力も強く,高い有用性が期待できる。しかし,チューブ内の痰詰まりやチューブの破損も経験しており,チューブの形状,材質は,改善の余地があると思われた。