日本気管食道科学会会報
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特集:気管食道科領域と咳嗽
咳嗽の病態生理
藤村 政樹
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2004 年 55 巻 5 号 p. 367-374

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抄録

咳嗽(咳)は多くの呼吸器疾患の部分症状であるが,咳嗽だけを症状とし,初診時の一般検査にて原因を診断することが困難な症例がある。とくに3週間以上持続する咳嗽(遷延性咳嗽)や8週間以上持続する咳嗽(慢性咳嗽)が唯一の症状である患者が増加している。この10数年間の日本咳嗽研究会を中心とした基礎および臨床研究によって,我が国における慢性咳嗽の原因疾患とその病態が少しずつ明らかとなってきた。このような咳嗽の原因疾患を正しく診断できれば,それぞれの原因疾患に対する適切な治療が可能である。欧米では,慢性咳嗽の三大原因疾患は,胃食道逆流,後鼻漏および喘息と報告されているが,本邦における三大原因疾患は,副鼻腔気管支症候群(湿性咳嗽),咳喘息(乾性咳嗽)およびアトピー咳嗽(乾性咳嗽)であり,胃食道逆流の頻度は低く,後鼻漏による乾性咳嗽の報告例はみられない。欧米と我が国における違いは,欧米では解剖学的診断アプローチによって診断しているが,我が国では病態学的アプローチによって診断していることが要因と考えられる。

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