日本気管食道科学会会報
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症例報告
声帯突起の橋状癒着を認めた陳旧性喉頭外傷の1例
樫尾 明憲二藤 隆春竹内 啓田山 二朗加我 君孝
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2005 年 56 巻 3 号 p. 280-285

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抄録

今回われわれは, 声帯突起に橋状癒着をきたした陳旧性喉頭外傷症例に対し最小限の外科的侵襲により改善を得ることができた。症例は27歳女性, 交通事故による鈍的喉頭外傷受傷後30日に当科受診。初診時, 両側声帯ともに可動性を認めず, 両声帯の短縮, 炎症を認め声門は完全に閉鎖しており癒着を疑わせた。これに対し, 消炎を待ち, 直達喉頭鏡検査にて声門の状態を観察し喉頭筋電図にて甲状披裂筋の活動を精査した。直達喉頭鏡検査では右披裂部の固着はなく, 声帯突起の局所的癒着を認めるのみであることが判明した。また, 筋電図ではほぼ正常な筋活動が認められた。さらに, 当初全く可動性を認めなかった右披裂部が, 外来経過観察中に可動性がわずかながら認められてきた。以上より右声帯の可動制限は神経麻痺が原因であり, 神経の回復を待つことで可動性を回復できる可能性があると判断した。反回神経麻痺の回復を見こめる6カ月の期間をあけ, 喉頭微細手術下に癒着部切開を行った。右声帯の可動性は直後より改善し, その後の声帯の再癒着も認めず気道狭窄を解除することができた。陳旧性喉頭外傷に対する一連の治療法選択において直達喉頭鏡検査, 筋電図による病状把握が非常に有用であった。

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