2005 年 56 巻 5 号 p. 439-444
ゴアテックスは組織親和性に優れ, 近年, 甲状軟骨形成術I型の窓枠固定材料として普及している。材質的に柔らかく細工や調節がしやすいのも利点のひとつであるが, その材質ゆえに術後ゆるみやすい欠点もある。われわれは, 反回神経麻痺, 声帯萎縮症例に対し, ゴアテックスの充填方法を工夫し確実な内方移動ができるように試みた。まず甲状軟骨板の前方のみに小さな窓枠を設け, そこから喉頭ファイバーのモニター下にゴアテックスを後方に向かって挿入した。十分な内方移動がえられたところでゴアテックスを軟骨に固定した。これによりゴアテックスは軟骨の内側にゆるむことなく充填することができ, 術後の音声機能も改善した。皮膚切開や甲状軟骨の剥離も最小限であり, 本法は低侵襲で簡便, 確実な方法と考えられた。