抄録
痙攣性発声障害は耳鼻咽喉科医にとって治療に難渋する疾患のひとつである。内転型痙攣性発声障害に対してはBotulinum Toxin(以下BTと記す)の甲状披裂筋内注入が欧米では第1選択とされるが,わが国では保険適応がないためにどの施設でも可能な治療ではない。そのためBT療法を受けられない症例に対しさまざまな治療法が報告されている。またBT療法の効果は永続的でなく,この点からも効果が持続する手術療法が選択肢のひとつになり得る。
今回われわれは内転型痙攣性発声障害に対して喉頭微細手術下甲状披裂筋切除術を施行したので,その結果について報告する。
症例は2001年から2005年までに当科を受診した内転型痙攣性発声障害症例の3症例である。患者と家族にBT療法と手術について十分に説明をした。3症例とも手術を希望したため,喉頭微細手術にて両側甲状披裂筋切除術を施行した。
術後すみやかに痙攣様音声は改善したが,G(3)R(1)B(3)A(0)S(3)の気息性嗄声を認めた。約1-2カ月で気息性嗄声は改善傾向を認め,約6カ月でG(1)R(0)B(1-0)A(0)S(1)に改善した。術前術後のモーラ法による評価値は3例とも改善した。現在は全例G(0)R(0)B(0)A(0)S(0)であり再発もなく経過観察中である。
痙攣性発声障害の治療において喉頭微細手術下両側甲状披裂筋切除術は永続的治療効果が得られる点で有用である。