抄録
成人発症の先天性食道気管支瘻の2例を報告する。症例1は65歳,女性。慢性咳嗽の既往歴あり。検診でのバリウム食道造影検査で瘻を指摘されて当院を受診した。胸部CTでは中部食道から右のB6気管支に及ぶ食道気管支瘻を認めた。気管支鏡検査では,食道チューブから入れた色素剤の右B6からの流出が観察された。瘻の切除術が施行された。病理学的に,瘻は扁平上皮で被われ,固有筋層をもち,先天性食道気管支瘻と診断された。
症例2は57歳,男性。発熱と喀血で受診した。以前の検診での食道造影で食道から右下葉気管支への瘻を指摘されていた。胸部CTでも食道気管瘻が認められた。食道内視鏡検査で憩室と瘻の入口部が観察された。食道と右B6気管支の瘻との交通は,症例1と同様に気管支鏡と色素注入で確認した。瘻の切除と右下葉切除術が施行された。瘻の遺残組織周囲には炎症所見が認められた。病歴からは,瘻からの食物の誤嚥が肺膿瘍を引き起こしたと推測された。
食道気管支瘻の早期診断には胸部CTが重要な役割を果たす可能性がある。