抄録
反回神経に浸潤した甲状腺分化癌44例中,15例で顕微鏡下での温存が可能であった。この15例と神経の温存が不可能であった29例において,他臓器同時浸潤率,局所再発率,予後を比較した。神経温存群では他臓器浸潤率,局所再発率とも,温存不能群に比して低率であった。遠隔転移率は両群ともほぼ同率であった。温存群では1例の他病死例があったが,温存不能群では局所再発から原病死した1例が存在した。肉眼で神経の温存が不可能と判断した症例でも,顕微鏡下での剥離が可能な症例が存在する。反回神経浸潤の定義を明確にすべきである。