日本気管食道科学会会報
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症例報告
甲状披裂筋切除術変法により声門開大を達成した両側声帯外転障害の1例
小川 真山本 佳史鎌倉 武史猪原 秀典渡邊 雄介久保 武
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2006 年 57 巻 4 号 p. 371-377

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抄録

両側声帯外転障害に対して,声帯組織減量および声門開大を目的に甲状披裂筋切除術変法を施行し,良好な声門拡大が得られた症例を経験した。
症例は68歳女性で,主訴は嗄声であった。初診時症状として,吸気時喘鳴,呼吸困難感,軽度の無力性嗄声が認められたが,誤嚥は認められなかった。喉頭所見においては,発声時の声帯内転,息こらえ時の声門上部の閉鎖は正常であったが,吸気時の声帯外転障害が認められた。治療として,局所麻酔下の気管切開術施行後に,全身麻酔を導入した。喉頭顕微鏡下に両声帯上面の粘膜を切開し,甲状披裂筋内側部を鉗除した。その後,左側のみ切開部辺縁粘膜のトリミングを行い,両切開部を縫合した。術後,両声帯にはraw surfaceの部分は認められず,創部の治癒は良好であった。気管切開孔の閉鎖後,術後約3週間で退院となった。術後の喉頭所見上,吸気時に菱形の声門が形成され,吸気性喘鳴が消失した。また,発声および嚥下の障害は認められなかった。

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