日本気管食道科学会会報
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症例報告
Percutaneous Dilational Tracheostomy (PDT) による経皮的輪状甲状切開後の声門下狭窄
溝上 大輔唐帆 健浩磯田 晋田部 哲也塩谷 彰浩
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2007 年 58 巻 5 号 p. 484-490

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抄録
近年,長期間におよぶ人工呼吸器管理が必要な患者に対して,Percutaneous Dilational Tracheostomy (PDT)が術後集中治療室などにおいて頻用され,その簡便性,術後創感染の少なさ等に関して,既に一定の評価を得ている。特に,胸骨正中切開創を有する胸部外科術後では感染創となりうる気管切開創と連続してしまい縦隔炎等の重篤な合併症を引き起こすことがあるため,気管周囲の剥離操作を行わないPDTが好んで施行されている。通常PDTは,第1第2気管輪もしくは輪状軟骨下を穿刺して行われるが,輪状甲状間を穿刺する,より高位のPDTを施行すれば,剥離操作を行わない利点に加え,胸骨正中切開創からの距離も取れることからPDTで輪状甲状切開を施行している施設もある。しかし,その有用性や安全性については未だ十分な議論がなされていない。われわれは,心臓血管外科術後,縦隔炎予防目的にCOOK社製Ciaglia Blue Rhino®を用いてPDTで輪状甲状切開を施行され,声門下狭窄をきたした2例を経験した。PDTは症例を選び,十分に経験のある術者が通常の位置に行えば外科的気管切開と同様に有用な方法である。ただし,声門下狭窄等の長期的合併症については更なる検証が必要である。特に,PDTを輪状甲状間に施行し,気管カニューレを長期留置すると声門下狭窄をきたす可能性が高い。
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