閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)はしばしば,周術期気道管理の障害となり得る。今回われわれは口蓋扁桃に発生した節外性リンパ腫の1症例を経験した。本症例はSAS症状に疾患が隠蔽されており,SASに対する手術治療すなわち口蓋扁桃摘出術で麻酔導入時に結果的に挿管困難をきたすことになった。これについて臨床経過とともに文献的考察を加えて報告した。
症例は51歳男性で,上気道感染後に持続する喉頭違和感で診察を受けたが,同時に固形物の嚥下障害があり,夜間の呼吸障害が強く睡眠時無呼吸症候群を疑われて紹介となった。初診時,口蓋扁桃はMackenzie分類3度に高度腫大しており舌根扁桃もまた高度に腫大していた。内視鏡では声帯の後端と披裂部が同定できるのみであった。全身麻酔での扁桃摘出術およびUPPP手術を計画した。麻酔導入時に気道の確認に最重点を置いていたが,舌根から喉頭蓋にかけての乳頭状粘膜増殖性変化を認め,萎縮した喉頭蓋や声帯が同定不可能であった。内視鏡下の気管内挿管もついで試みたがこれも困難であり,最終的に緊急気管切開の運びとなった。一連の操作とくに緊急気管切開により合併症として発生した嚥下性肺炎と頸部食道損傷による消化管穿孔については,ICUで約2週間の集中治療を受け,上縦隔ドレーンを2週間留置することとなった。
後日摘出された口蓋扁桃の病理組織診断は最終的に末梢型非特異的T細胞リンパ腫と報告された。今後は本例のように睡眠時無呼吸症候群に関連した診療から腫瘍性疾患が発見される機会が増えることが予想され,注意が必要と思われる。
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