日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
特集1 シンポジウム:局所進行喉頭癌に対する音声保存治療
局所進行喉頭癌に対する喉頭亜全摘出術SCL-CHEPの切除限界
中山 明仁林 政一清野 由輩宮本 俊輔竹田 昌彦正来 隆横堀 学岡本 牧人
著者情報
ジャーナル 認証あり

2009 年 60 巻 2 号 p. 86-89

詳細
抄録

声門型喉頭癌が前方,後方,上方,下方の4方向に進展した場合の特徴とsupracricoid laryngectomy with cricohyoidoepiglottopexy (SCL-CHEP)の切除限界について検討した。
前方では前連合を経由した軟骨浸潤が問題となる。前連合部を経由した健側進展は注意を要する。いずれもSCL-CHEPで対応可能である。前頸筋へ直接浸潤した場合は適応外である。
後方では喉頭室を介した進展と披裂部浸潤が問題となる。披裂軟骨を切除範囲に含めることで対応できる。旁声門間隙については梨状陥凹粘膜近傍までen blocに切除することができる。
上方では仮声帯進展で小唾液腺導管系を介した深部進展に注意を要する。喉頭蓋への進展はcricohyoidopexyで対応できるが,舌骨や舌根部への浸潤は適応外である。
声門下方進展は評価が難しく,4方向中唯一切除断端陽性例が確認された。声門下進展では輪状軟骨の傾斜との関係を考慮に入れる必要がある。声門後方,輪状軟骨後端の処理は進行癌を扱う場合のキーポイントである。
進行喉頭癌の場合,適応ボーダーライン症例の正確な評価が,機能温存手術の成否を左右する重要な鍵となる。

著者関連情報
© 2009 特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top