日本気管食道科学会会報
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特集:気管食道領域における漢方医学
GERD治療と漢方医学
大島 忠之三輪 洋人
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2009 年 60 巻 5 号 p. 401-408

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抄録
胃食道逆流症(GERD)は欧米に多いと言われてきたが,食生活など生活習慣の欧米化,肥満の増加,酸分泌能の増加,Helicobacter pylori感染率の低下などから,わが国でも確実に増加傾向にある。GERDでは,胃から食道への逆流を防ぐ機構あるいは排出する機構が食道運動異常,下部食道括約筋の機械的あるいは機能的異常,食道クリアランス,胃内容の排出遅延などによって障害され,著しく生活の質(QOL)が損なわれている。わが国には非びらん性胃食道逆流症(NERD)や軽症の逆流性食道炎が圧倒的に多く,これら軽症のGERDが重症GERDに進行することは多くない。したがって自ずと治療目標は,自覚症状である胸やけ,呑酸などの症状改善や,これに伴う日常QOLの向上となる。最も有用な治療は胃酸分泌抑制であるが,この薬の効果が少ないときには治療に難渋することも多い。実際,食道粘膜傷害と症状が相関せず,NERDにおける,プロトンポンプ阻害薬(PPI)の効果は50%程度と言われている。近年,GERD治療における漢方薬のエビデンスが得られつつある。六君子湯は,酸分泌を抑制することなく,食道クリアランス,あるいは胃排出能や胃適応性弛緩作用を介してGERD患者,特にNERD患者で症状を改善する可能性が考えられる。
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