抄録
小児外科で扱う気管食道奇形は,発生学的背景から,前腸の分離不全に起因する食道閉鎖症,食道狭窄症,気管気管支狭窄症,気管無形成などと,肺芽の発生異常に起因するBPFMなどの疾患群に分けられる。代表的気管食道奇形である食道閉鎖症では,近年,治療成績の向上から従来のリスク評価は見直され,重症心奇形や染色体異常のある症例に対する治療戦略や,晩期成績を視野に入れた食道再建法,癌化の問題などが注目されている。一方,新生児に対する内視鏡的食道修復や気管気管支狭窄症に対するスライド形成術など新たな術式の普及や,喉頭気管食道裂や気管無形成に対する挑戦的な治療の報告もあり,気管食道奇形に対する外科の進歩は最近の小児外科学のトピックスの一つとなっている。