抄録
重症心身障害児 (重症児) が長期にわたり安定した呼吸状態を保つための気道確保は,患児の生活の質quality of life (QOL) の向上につながる。また重症児の死因の半数以上を誤嚥性肺炎が占めることから,外科的予防的措置の関心は高まっている。当院小児外科で過去20年間に施行した気管切開術施行例の約半数が重症児であった。近年小児に対する喉頭気管分離術も増加しており,術後多くの症例で気道管理が容易になり,誤嚥性肺炎の発生も著減した。重症児の在宅あるいは施設での管理に際し,気道確保手術は患児のQOLのみならず,介護の安全性確保に有用であるが,実施に際しては十分なインフォームドコンセントと,個々の症例での適応を考慮すべきである。