日本気管食道科学会会報
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症例
甲状軟骨形成術IV型術後に声帯開大制限をきたした性同一性障害症例
栗田 卓梅野 博仁千年 俊一濱川 幸世中島 格
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2011 年 62 巻 1 号 p. 24-29

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抄録
喉頭形成術は覚醒下で患者の音声を確認しながら行う手術であるが,最近では全身麻酔下に行っている施設がある。今回われわれは他施設で全身麻酔下に行われた甲状軟骨形成術IV型術後に呼吸困難,嚥下障害,発声障害を訴え受診した性同一性障害症例を経験した。
初診時,両側声帯外転障害による気道の狭小化を認めた。右声帯はほぼ正中位固定しており,左声帯は外転障害を認めた。呼吸困難の改善のために甲状軟骨形成術IV型時に甲状軟骨と輪状軟骨を近接させたナイロン糸を切断したが,近接を解除できず,気管開窓術を行った。甲状軟骨IV型術後1年後には声帯の可動性がわずかに改善し,呼吸困難・嚥下障害・音声障害の改善がみられた。本症例の病態は甲状軟骨と輪状軟骨の過度の近接により声帯の過伸展による過度の声門閉鎖と喉頭挙上障害が生じたことである。声帯の可動性が改善した理由は,長期間の声帯の過伸展により声帯長が緩み,声帯緊張が経時的に減弱したためと推察された。
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