日本気管食道科学会会報
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特集4 教育セミナー2:声門,声門下,気管狭窄治療の進歩
声門・声門下・気管狭窄の外科治療:喉頭気管溝形成と気道再建を中心に
大森 孝一多田 靖宏野本 幸男谷 亜希子金丸 眞一中村 達雄
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2012 年 63 巻 2 号 p. 124-129

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抄録

声門・声門下・気管狭窄は, 先天性, 炎症性疾患, 感染症, 外傷 (気管挿管や気管切開術後を含む), 腫瘍などで発症する。原因疾患の病態に応じて個々に対応する必要があり, 診断には内視鏡検査とCTなどの画像検査が有用である。長軸方向と水平方向に狭窄の部位と範囲を評価する。
狭窄病変の範囲が狭い例にはTチューブ留置や内腔からの瘢痕切除術が行われる。狭窄が全周性, 瘢痕が長軸方向に広範囲, 支持軟骨が欠損している例には, 喉頭気管溝形成術や気管端々吻合術の適応となり, 著者らは前者の方法を行っている。瘢痕組織の切除と内腔の拡大を目的に喉頭気管溝を形成し, ステントを留置する。2~6カ月後にステントを抜去し, 再狭窄がなければ喉頭気管溝を閉鎖する。軟骨欠損が大きければ耳介軟骨や肋軟骨などを用いて再建するが, 複数回の複数部位の手術が必要となる。著者らは, ポリプロピレンメッシュとコラーゲンスポンジを用い生体内で組織再生を誘導する再建技術を開発した。犬を用いた動物実験で最長5年の観察で安全性を確認した後に, 2002年より, 倫理委員会の承認を得て気管の再生医療を開始した。これまで10例に行い最長6年の観察期間で再狭窄はない。

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