抄録
耳鼻咽喉科領域の内視鏡は今まで,消化器領域のものより解像度や画質で劣っていた。しかし,新たに開発された高解像度鼻咽喉スコープ“VNL-1590STi”は,消化器内視鏡と同程度の撮影センサーを搭載するため高画質が得られるようになった。さらに,デジタル信号処理によって強調画像を生成するi-scanと併用すれば,初期の粘膜病変検出精度の向上が期待される。
2012年4月から10月の間に当科を受診した中咽頭癌と下咽頭癌の症例のうち,経口法手術の適応であった5症例全例に対し,i-scan併用高解像度鼻咽喉スコープによる切除範囲の決定を行った。そして,術後切除標本と比較検討することで,その精度を明らかにした。
i-scan併用高解像度鼻咽喉スコープで検出された異常粘膜病変には,病理学的に上皮内癌が確認された。結果,全例で上皮内癌を含めた切除範囲を決定することができており,低侵襲手術における切除範囲の決定に,i-scan併用高解像度鼻咽喉スコープは有用である可能性が示唆された。また,色調を自由に変調できるi-scan TEのうちTErとTEgを利用すれば,頭頸部領域における粘膜病変のスクリーニングに有用であると考えられた。