2008年から2013年の間に当科で治療を行った12例の甲状腺癌縦隔リンパ節転移症例を検討した。6例では頸部アプローチで縦隔リンパ節摘出を行い,残る6例は胸骨アプローチで行った。病理組織学的検査では縦隔郭清した全症例でリンパ節陽性であった。3例が腫瘍の縦隔再発をきたし,1例は死亡した。縦隔郭清における合併症としては,L字切開後の2例で気胸が認められ,頸部アプローチの1例で術後出血をきたし,結果的に気管切開を行った。頸部アプローチも胸骨アプローチも,いずれも甲状腺乳頭癌の上縦隔リンパ節転移に対し,安全で有用な治療法であると思われた。ただし予防的縦隔郭清は必要ないと思われた。