2016 年 67 巻 6 号 p. 398-405
高度の嚥下障害に対して,経口摂取の回復を目的とした外科的治療は有効な治療手段である。今回,われわれは2008年~2014年の間に嚥下機能改善手術を行った15例の術後経過を後方視的に検討し,手術適応と限界について考察を加えた。症例の年齢は43~87歳,男女比は12 : 3であった。嚥下障害の原因は脳血管障害が10例,加齢が3例,その他2例であった。嚥下機能は藤島らの摂食状況レベル評価法と兵頭らの嚥下内視鏡検査スコア評価法により評価した。摂食状況レベルは術後 (退院時,最良時,最終受診時) に有意に改善したが,高齢者では経過中に悪化がみられた。嚥下内視鏡検査スコアも術後 (退院時,最良時) には有意に改善がみられた。7例では経過中に嚥下内視鏡検査スコアが悪化したが,そのうちの6例では経口摂取は継続できていた。70歳代後半以降の高齢者では,ALDや認知機能の低下により手術効果が満足すべきものではなかった。手術後のリハビリテーションや療養支援プランは予め検討しておくべきと考える。