日本気管食道科学会会報
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症例
大動脈ステント内挿術施行後のsalvage食道癌手術の臨床経験
菊池 真維子中島 政信室井 大人高橋 雅一百目 木泰伊藤 淳山口 悟佐々木 欣朗石川 仁櫻井 英幸加藤 広行
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2016 年 67 巻 6 号 p. 423-428

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抄録

食道癌salvage手術における,最も重要な予後因子はR0治癒切除とされる。これまではcT1-2のsalvage手術の治療成績が良好とされてきた。今回,食道癌に対して化学放射線療法を施行後,腫瘍の遺残および大動脈浸潤が疑われた症例に対し,大動脈ステント内挿術を施行してsalvage手術によるR0治癒切除が可能であった症例を経験したので報告する。

症例は,68歳男性,胸やけおよび背部痛を自覚し,近医を受診した。精査の結果,食道癌の診断となり,化学放射線療法を施行した。化学放射線療法施行後も腫瘍の遺残が疑われたため,salvage手術の目的で当科紹介となった。当科での精査の結果,cT4 (大動脈) を疑う所見であり,手術の安全性を考慮し,大動脈ステント内挿術を施行し,食道癌手術を行った。大動脈ステントを挿入していたことで,大量出血をきたすことなく大動脈外膜の合併切除を施行した。病理結果では腫瘍の遺残は認めなかったものの,今後のcT4 (大動脈) が考慮される症例に対しR0治癒切除が可能となる治療戦略として検討されうるものであり,若干の文献的考察を交えて報告する。

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