2017 年 68 巻 1 号 p. 20-25
局所麻酔下での気管切開術は,気管内挿管下と比して難易度があがり合併症も起こりやすいことが知られている。また気管内挿管下でも麻酔科医によって術中管理がされていないこともあり,手術の刺激に対する患者の体動や咳嗽反射などを経験する。われわれは,気管切開術における合併症の頻度や内容について局所麻酔下と気管内挿管下で比較した。また気管内挿管下において,麻酔科医による術中管理の有無による合併症の頻度や内容について検討した。2010年4月から2015年3月までに当科で施行した気管切開術204例を対象とした。204例中41例 (20.1%) に合併症を認めた。気管切開術施行時の状況別にみると,局所麻酔下の気管切開術は,気管内挿管下と比較して皮下気腫など早期合併症の頻度は有意に高かったが,気管孔肉芽など晩期合併症は有意に低い結果であった。気管内挿管下で麻酔科医の管理がない場合は,ある場合と比較して早期合併症に有意差は認めなかったが,気管孔肉芽など晩期合併症の頻度が有意に高い結果であった。気管切開術の合併症を減らすには,可能な限り気管内挿管を行い,さらに麻酔科医による術中管理下での施行が望ましいと考える。