日本気管食道科学会会報
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症例
小児喉頭顆粒細胞腫の1例
井上 真規小河原 昇折舘 伸彦
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2017 年 68 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

顆粒細胞腫は全身に発生する良性腫瘍であるが,喉頭への発生は少なく,また小児の症例は非常に稀である。今回,小児喉頭顆粒細胞腫の症例を経験したので報告する。症例は10歳女児で,5歳頃から嗄声を認め増悪していたが放置されていた。母親の虐待が判明し,10歳時に施設入所となった。その後感冒時に吸気性喘鳴が出現したため,前病院を受診し喉頭腫瘤を認め当科紹介となった。CT,MRI所見では喉頭後壁から気管後壁へ3cm大の腫瘤性病変を認めた。気管切開術,腫瘍生検術を施行し,顆粒細胞腫と診断した。喉頭截開による腫瘍摘出術を予定したが,腫瘍は両側披裂から第2気管輪まで進展し,輪状軟骨背尾側へ回り込んでいた。喉頭機能の温存目的で腫瘍部分切除術を行った。喉頭後壁に腫瘍の遺残を認めるが,術後4年経過し明らかな増大は認めていない。顆粒細胞腫は悪性転化は稀であるが腫瘍の大きさや断端陽性であることより,再増大だけでなく悪性転化の可能性も考慮しての長期的な経過観察が必要であると考えられた。

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