日本気管食道科学会会報
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症例
術前検査にて非反回下喉頭神経と診断された甲状腺乳頭癌に対し上縦隔郭清を行った1例
田中 英基塚原 清彰本橋 玲岡田 拓朗矢富 正徳武田 淳雄小島 理央小川 恭生
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2017 年 68 巻 1 号 p. 52-56

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抄録

非反回下喉頭神経の若年性甲状腺乳頭癌に対して胸骨縦切開を併用した症例を経験したので報告する。症例は18歳女性,左頸部腫脹を主訴に受診した。頸部超音波検査にて甲状腺内にびまん性の微小石灰化を伴う腫瘤と頸部リンパ節転移を疑う所見を認めた。穿刺細胞診検査にてpapillary carcinomaと診断した。また,造影CTにて左内深頸,副神経,両側鎖骨下,上縦隔に多発する腫大したリンパ節を認めた。右鎖骨下動脈の走行異常も認め,非反回下喉頭神経の存在が示唆された。甲状腺癌cT2N1bM0,StageⅡであった。がん診療ガイドラインに基づき高危険度群とした。甲状腺全摘術,両側頸部郭清術および上縦隔郭清術を行った。リンパ節転移は縦隔内の深部まであり,胸骨縦切開を併用した。自験例では非反回下喉頭神経であるがゆえに,上縦隔の操作に際し反回神経に留意する必要がなく,喉頭麻痺を回避可能であった。術後は合併症なく経過した。術後補助治療として外来ヨード治療を併用した。現在1年が経過し,再発転移なく経過している。解剖異常を含めた術前診断が適切な治療方針の決定および合併症の回避に重要である。

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