症例は61歳,男性。主訴は右頸部腫瘍。現病歴は1カ月前からのどの違和感がありCT検査を施行したところ右甲状腺の背側に腫瘍を認め他院に紹介された。精査の結果,反回神経鞘腫の疑いで摘出すると嗄声などの合併症が出現する可能性が高いと診断された。その後のどの違和感は改善したが,腫瘍の治療に関してセカンドオピニオン目的にて前医を受診したところ当センターでの手術を勧められ受診した。術前MRI画像から反回神経由来の神経鞘腫を疑い手術を行ったところ食道に発生した神経鞘腫で反回神経の食道枝由来と考えられた。食道神経鞘腫の中でも頸部食道に発生することはこれまでの報告からもまれであった。本症例では術前に実際の由来神経を診断することは困難であり食道神経鞘腫もまれではあるが存在するため鑑別診断の一つとして考慮する必要があると考えられた。