2017 年 68 巻 6 号 p. 403-408
食道粘膜下腫瘍のうち比較的稀な食道囊腫の1例を経験したので報告する。症例は43歳男性で人間ドックの上部消化管内視鏡検査にて食道粘膜下腫瘍を指摘され,精査加療目的に当院へ紹介された。既往歴は20歳代に肺囊胞の破裂による気胸で両側とも開胸手術を受けていた。胸部X線検査で左下肺野に陰影を認めた。内視鏡検査では下部食道左壁に1/3周を占める隆起性病変で内腔が透見されEUSで低エコー均一であった。腫瘍は径5 cmありCTでlow density, MRIのT1T2強調画像にて高信号で隔壁があり食道囊腫と診断した。手術は左開胸開腹で行い腫瘍は下縦隔に存在し横隔膜,肺および心囊と癒着しており剥離した。囊腫の口側と肛門側で食道をテーピングした後,腫瘍と食道筋層を分けていき破裂することなく摘出できた。食道粘膜は損傷しなかったが膨隆し食道筋層が約1/3周欠損となったため,胃底部を食道筋層に縫合した。術後経過は良好で10日目に退院となった。囊腫の内容はやや混濁した黄褐色の液体であった。病理検査で囊腫内腔は線毛上皮および非角化扁平上皮で覆われduplication cystの診断であった。食道囊腫の診断および治療に関して最近の知見を含めて報告する。