日本気管食道科学会会報
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特集:アルコールと気管食道科
アルコールと呼吸器疾患
西川 裕作東田 有智
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2018 年 69 巻 5 号 p. 290-296

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抄録

アルコールは多くの疾患の発症や増悪に関わっており,呼吸器疾患においても同様である。誤嚥性肺炎や睡眠時無呼吸症候群はその代表的なものであり,慢性的に飲酒を行っている患者においては注意を要する。またあまり認知されていないが,気管支喘息においてもその増悪因子として重要である。アルコール誘発喘息の機序はアセトアルデヒドを酢酸に代謝させるアセトアルデヒドデハイドロゲナーゼ(ALDH)の活性を低下させるALDH22遺伝子の存在により血中のアセトアルデヒドの濃度が上昇することにある。アセトアルデヒドには肥満細胞からヒスタミンを遊離させる作用があり,その作用によりヒスタミンの血中濃度が上昇し喘息発作が誘発される。また一部の薬剤や食物の中にはアセトアルデヒドの代謝を阻害するものがある。それらによってもアルコール誘発喘息は促進される。この遺伝子は日本人を含むモンゴロイド人種に多く,白人や黒人にはほとんどないとされる。アルコール誘発喘息の診断にはALDH22遺伝子の検査や負荷試験が有用である。その予防にはアルコール含有物質の摂取の回避と薬剤治療としては従来の喘息治療に加え,抗ヒスタミン薬の投与やDSCG(クロモグリク酸ナトリウム)の吸入などが有効とされている。

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