今回われわれは気管内壁に再発した頸部気管支嚢胞腺癌の1例を経験した。症例は71歳の女性。甲状腺全摘術および頸部郭清術後ほどなく気管内壁に再発した。腫瘍切除後の気管再建には肋軟骨と歯科用印象材を用いた。構造体としての強度を得るため肋軟骨片により気管外枠を作成した。また歯科用印象材を充填した手術用ゴムグローブを気管内にステントとして留置した。術後3年目腫瘍の再発は認められず,十分な強度と呼吸道としての内腔が保持された気管が再建できた。歯科用印象材は気管内腔を形成するためのステントとして有用な材料である。