2019 年 70 巻 3 号 p. 238-244
症例は83歳男性。8年前より吸気性喘鳴を伴う呼吸困難発作を繰り返し,過去2回の気管切開歴があった。徐々に両側声帯外転が低下していくことが指摘され,1年前に2回目の気管切開を受けて以降,レティナ®にワンウェイバルブ®が装着されたままの状態であった。気管孔閉鎖希望にて当科受診。喉頭内視鏡検査で声帯が吸気時に軽度外転した後,吸気途中から声門方向へ引き込まれるように内転し,声門狭窄する現象が観察された。後輪状披裂筋に対するbipolar hooked wire electrodeを用いた筋電図検査では明らかな筋原性変化を認めた。Woodman法による声門開大術(左側)を行い,術中に後輪状披裂筋に限局した明らかな変性を認め,病理所見から後輪状披裂筋の非炎症性ミオパチーと診断した。十分な声門開大が得られたので,気管切開孔を閉鎖した。その後1年6カ月経過しているが気道狭窄の再燃は認めない。