日本気管食道科学会会報
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症例
頸部外切開にて摘出した全部床義歯異物
馬場 剛士中村 一博三浦 怜央鈴木 啓誉大島 猛史
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2020 年 71 巻 6 号 p. 409-413

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抄録

義歯異物は頻繁に遭遇する疾患である。下咽頭に突出していれば耳鼻咽喉科医により内視鏡下に,食道内に落ちていれば消化器内科医により内視鏡下に摘出される。局部床義歯には固定用のクラスプがあり消化管粘膜に刺入すると摘出困難と報告されているが,無歯顎用の固定クラスプのない全部床義歯では摘出は容易であることが多い。今回われわれは,頸部食道粘膜壁に嵌頓した固定クラスプのない全部床義歯異物に,外切開摘出を要した症例を経験した。喉頭内視鏡にて下咽頭に義歯を認めなかった。画像精査にて輪状軟骨の背側,頸部食道に嵌頓している義歯を認めた。前医にてすでに内視鏡下摘出術が不可能であったことを鑑み,全身麻酔下での経口的摘出術と外切開による経皮的摘出術を選択した。全身麻酔下に下咽頭から頸部食道を展開したが鰐口鉗子にて把持した義歯は動かず,外切開による摘出術に切り替え義歯を摘出した。固定クラスプがない全部床義歯でも,サイズによっては経口的摘出が困難であり,外切開を要すことが再確認された。

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