2022 年 73 巻 4 号 p. 263-272
気管切開術後に呼吸状態や全身状態が改善した場合,われわれは患者の経口摂取の再開や発声機能の回復を目指して努力する必要がある。しかし,不適切な部位で気管切開術をされ,術後管理が不十分であると,それらの機能が回復しない場合がある。症例1は83歳男性,輪状甲状靭帯に気管切開カニューレが留置され,そのまま経過観察されていたため,喉頭挙上障害と声門下狭窄を生じた。症例2は86歳男性,気管の右側面から気管切開孔が作成されたため,喉頭挙上障害と右声帯麻痺を生じた。症例3は78歳女性,高位気管切開で輪状軟骨を損傷し,喉頭挙上障害と声門下狭窄を生じた。われわれはこれら3症例に対して,適切な位置に気管孔を作り直した。症例1では喉頭挙上と声門下狭窄が改善し,気管孔を閉鎖できた。症例2では喉頭挙上と右声帯麻痺が改善し,気管孔を閉鎖できた。症例3では輪状軟骨前面を切除し,縦長の気管孔を作成した。気管孔の閉鎖は困難であったが,気管切開カニューレが不要になった。いずれの症例も再手術で気管孔を適切な位置にすることで,経口摂取が可能になった。適切な気管切開を施行することは,術後の嚥下機能や発声機能の改善に重要である。