2022 年 73 巻 4 号 p. 273-278
甲状軟骨形成術4型(TP4)は牽引糸を用いて甲状軟骨と輪状軟骨を近接させ話声位を上昇させる術式である。牽引糸の固定のために人工材料を用いることがある。今回われわれは,術後13年に牽引糸とゴアテックス®(GT)に感染がおこり肉芽腫を形成した症例を経験したので報告する。症例は78歳男性で,200X年に性同一性障害と診断され,200X+1年に甲状軟骨形成術4型および喉頭隆起切除術を施行された。200X+14年に前頸部に腫瘤が出現し当科を紹介され受診した。頸部皮膚正中に感染を伴う肉芽様病変と,前連合部にGTと思われる異物を認めた。音声所見はG2R2B2, SFF 269Hz, Jitter係数4.43%,Shimmer係数7.87%,NHR 19.6dB, VHI 63/120点であった。全身麻酔下で肉芽およびGT,牽引糸を除去した。甲状軟骨に喉頭内腔への穿孔があり前頸筋群で被覆した。人工材料であるTP4の牽引糸とGTは感染の原因になりうることが再認識された。牽引糸とGTを除去してもSFFは低下せず,音声所見に変化はなかった。この1例の経験であるが,TP4が長期経過すると不可逆になりうることが示唆された。