症例は43歳,女性。X-2年3月より咽喉頭違和感を自覚し,その後も咳嗽持続,呼吸困難感が出現したため,X-1年4月に精査加療目的に当科を紹介受診した。胸部単純CTで気管壁の肥厚,気管右側に気管内腔に突出した腫瘤影を認め,PET-CTで気管右側に集積を認めたため,同部に対し気管支鏡下生検術施行。気管内腔の高度狭窄を認めたため,気管内隆起病変に対し気管ステントを挿入。病理検査にて気管原発腺様嚢胞癌と診断した。その後,IMRT 66 Gyを施行し経過をみていたが,約1年後に咳嗽増強,CTにてステント挿入部より尾側の気道狭窄の増悪を認めた。狭窄が高度であったため気管内挿管を施行し人工呼吸器管理となった。その後ECMO下にて挿管チューブ抜去後,既存のステント留置部より頭側および尾側へ再度気管ステントを留置した。同時に同部に対し生検も施行し,炎症性の肉芽組織を認めたものの,悪性細胞を認めなかった。今回われわれは,腺様嚢胞癌に対して気管支内視鏡下ステント留置後に,ステントによる物理的刺激がない気道に肉芽形成による高度気道狭窄をきたした気管腺様嚢胞癌の1例を経験したため報告する。