2024 年 75 巻 4 号 p. 262-268
固形癌の転移診断には18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG-PET)を用いるが,甲状腺腫瘍の質的診断を行うことは困難であること,偽陽性があることが問題となる。今回,甲状腺濾胞型乳頭癌頸部リンパ節転移症例における術前FDG-PETで斜角筋間に陽性所見を認めた線維腫症例を報告する。症例は28歳女性。X年Y月に右頸部腫脹を自覚し,Y+3月に前医耳鼻咽喉科を受診した。頸部造影CTと頸部ガドリニウム造影MRI,穿刺吸引細胞診にて,原発不明癌頸部リンパ節転移疑いと診断された。原発巣探索の目的でFDG-PET施行後,右上頸部リンパ節に対して摘出生検を行い,甲状腺乳頭癌の転移との診断にて,手術加療目的にY+9月に当科へ紹介となった。甲状腺右葉切除術とD2b郭清術および斜角筋間腫瘍摘出術を行い,甲状腺濾胞型乳頭癌(pT3bN1bM0),斜角筋間腫瘍は線維腫の診断であった。手術後神経障害など認めず,再発も認めていない。