2025 年 76 巻 6 号 p. 321-329
頸部外傷はさまざまな要因で生じるが,剣道の突きによる外傷では強い力で限局的な外傷を生じる。喉頭に損傷が及ぶと声帯粘膜下血腫や腫脹による気道狭窄だけでなく,甲状軟骨骨折や喉頭粘膜損傷による音声障害も問題となる。今回われわれは剣道中の竹刀による頸部外傷により甲状軟骨骨折をきたし,生じた音声障害に対して整復術を行った。症例は40歳代,男性。剣道中に竹刀による突きで前頸部を受傷。当日は体表に出血を認めたがすぐに止血,直後から嗄声を自覚していたが呼吸苦はなかった。受傷2日後に近医耳鼻咽喉科を受診し,喉頭内視鏡検査にて右披裂部~右声帯にかけて粘膜下血腫を認めたが明らかな声帯麻痺や上気道狭窄は認めなかった。CTでは甲状軟骨に縦骨折を認め,軟骨偏位も認めた。嗄声が継続したため,観血的整復固定術目的に受傷9日目に当科紹介。受傷11日目に全身麻酔下甲状軟骨骨折整復術を施行。軟骨表面を丁寧に剥離して骨折線を確認し,生体内分解吸収性骨接合材を用いて甲状軟骨を固定整復した。喉頭外傷による甲状軟骨骨折は気道狭窄等の呼吸障害がなくとも嗄声が生じている場合には速やかに整復術を行う必要があると思われた。