抄録
本論では,臨床医のニーズに応える医療診断支援システムの実現を目指し,臨床医の診断過程モデルに基づく臨床推論システムを提案する.そのため,臨床医の診断過程をモデル化し,診断過程内の医師の推論をどのように支援するかを明らかにする.本論で提案する臨床推論システムでは,診断に必要な知識の獲得を容易にするために,疾患と症状間の因果関係を知識として用いる.この「疾患→症状」の因果関係知識を用いた逆推論によって症状から疾患を推論する.また,臨床では可能性が小さい重要疾患の早期発見が必要であることから,不確実性として確率ではなく可能性理論を用いる.さらに,従来の多くのシステムは単一疾患を仮定するため,複数疾患でも診断可能な推論とする.