抄録
磁性流体はナノサイズ粒子であるため,その誘導性を利用して薬剤送達を行うMT-DDS(Magnetic Targeting Drug Delivery System)は,能動的薬剤送達システムとして注目されているが,目標部位へのキャリアの集積状況を観察する方法には未だ具体的な提案はない.そこで今回,大型放射光施設SPring-8を用いてマウスの腎臓と頭部で磁性流体の分布を観察し,評価することを目的として実験を行った.実験の結果から,放射光の透過撮影によって生体内でも磁性流体の空間分布を観察することができ,生体内での磁性流体密度を決定できることを示した.さらに,画像データのデジタル値を最適化することでコントラストが向上し,視覚的に磁性流体の分布をとらえることが,より容易にできることを示した.