抄録
老年医学においては、認知症や寝たきり問題と同様に、転倒は重要な問題である。これらの問題は相互連関があります。認知症のために転倒の危険が増加し、大腿骨骨折などして寝たきり状態になり、ますます認知症の症状が進行することはしばしば経験します。また、逆に転倒を契機に寝たきりとなり認知機能の低下を招いたという事例も見受けられます。転倒の問題は、在宅、入院、施設などどのような環境でも重要な問題です。今回は二つの民間病院での転倒の実態調査を行いました。年齢、転倒時の姿勢、場所により転倒による受傷の程度に差がどの程度あるかを中心に検討した。転倒により骨折などの重症を負った割合は、16.5%と45%であった。これは他の報告とほぼ一致する結果である。場所と転倒姿勢と重症度に関しては、特に差は認めなかった。また、予想に反して加齢によりむしろ重症度は軽減していた。近年、高齢者の転倒防止対策が多くの病院で実施されているが、その成果なのかもしれない。今後はより詳しく、転倒場所の床の材質などに焦点を当てて調査していく必要がある。