抄録
時間とは何か。改めてこの問いに論理的に答えようとするとなかなか、現在尚困難を伴うように思われる。物理学の分野では相対性理論により時間の本性の理解が深まり、物質、空間を含めて全体で理解する必要があるとされている。時間は空間と不可分で同等に扱われるべきものとされている。しかし、現実生活で時間は明らかに空間とは異なるものであり、相対性理論におけるミンコフスキーの4次元世界も実在性のあるものとは考えにくい。例えば、体験的には現在、過去、未来と時間は絶対的に区別されていて、物理学で扱うような等質な時間ではないのも事実である。また、体験的には「今」が全てでもある。この当たりの状況を精神病理学の観点から取り上げ、時間に関する物理との接点を探る。