抄録
近年,LEDや蛍光体の発展・普及により小サイズ・不飽和色の色光が使用される場面が増えている.これらを使用した信号灯火や各種インフォメーションの視認性や誘目性を考える上では,その明るさの把握が重要であるが,現在用いられている心理物理量の輝度ではこれらの色光の明るさを正確に表すことが出来ないという問題がある.同一の輝度でも白色光と色光では明るさが異なって見え,色純度の高い色光ほど影響が顕著となる.この現象はヘルムホルツ・コールラウシュ効果と呼ばれる.この現象によって生じる白色光の輝度(B)と色光の輝度(L)の明るさの差を是正するためのB/L比は既に色度図全域で求められているが,点光源やそれに近い小視角サイズの光源を用いた場合や,周辺視で観察した場合など色の判別がし難い条件での影響は十分に考慮されていない.そこで本研究では,光源に点光源と見做せる大きさの明滅光を用い,網膜偏心度および色純度がB/L比に及ぼす影響についての検討を行った.その結果,中心窩領域においても従来の知見との間に差異が生じることが示唆された.また網膜偏心度の影響を考慮した上では高色純度の青色光が点光源の信号として優れていることを示した.