抄録
本研究は, 妊娠期における口腔保健行動の現状を把握し, 妊婦と胎児の口腔状態を良好に保つために必要な課題について探索する. 妊娠期の口腔保健の必要性は母子健康手帳に助成券付きで掲載されているが, 十分な活用がされていない. しかし子どもの口腔保健管理は, 胎児期から始まるため, 妊娠中から口腔保健行動への意識付けを行い, 産褥期・育児期まで継続した取組が必要である. そこで,妊娠期における口腔保健行動の現状把握を目的として自記式質問紙調査を実施し, 有効回答率 32名のデータを得て分析を行った. その結果, 妊娠前からの歯科定期検診習慣, 補助的清掃用具の使用, 齲蝕・歯周病予防指導経験の項目にて, かかりつけ歯科医院の有無と有意差が認められた. つまり,産前からかかりつけ歯科医院を持ち, 歯科検診を習慣づけることの重要性が明らかとなった. また, 妊婦歯科健康診査の受診を促進するためには, 妊婦が最も密に関わる産科医師・助産師を対象に, 口腔保健行動の重要性について講習会を開催するなど, 多職種連携が必要である.