抄録
1 人1 台の学習者用端末という新しい学習環境の活用を促進するためには,教師がこれまで蓄積してきた授業づくりの知識に基づく授業実践に,ICT を取り入れるアプローチが必要である.本研究では,ICT 教具であるKey Words Meeting(以下KWM)を中学校1 年生の数学の授業に導入し,KWM が中学校教育でどのように活用可能かを明らかにすることを目的とした.その結果,授業内容別の記憶状況,および生徒別の記憶状況の指標が得られ,これらを分析することで,補足指導の戦略や教師の指導改善に活かすことができると考えられた.また,記憶状況の指標と定期考査の点数との間には正の相関が,補足説明の希望数と定期考査の点数との間には負の相関があったことから,生徒の授業内容の習得状況を予想するための情報としてKWM の提出内容を利用できることが示唆された.これらの結果から,KWM は,ICT を取り入れることに困難を感じている教師だけでなく,ICTを効果的に取り入れている教師にとっても,1 人1 台端末という新しい学習環境を活かすことができるICT 教具として有用であると考えられた.