2006 年 8 巻 1 号 p. 137-142
近年、ナノサイズの分子を操る技術が進み、あらゆる方面で応用技術が開発されつつある。医療技術の方面でもナノDDS(Drag Delivery System)の開発が世界的に行われている。我々はナノ磁石を用いたナノDDSの有効性を試みる。ナノ磁石は外部磁場による誘導の可能性が期待されている。しかし、ナノ磁石の生体内中での振る舞いは全く分かっておらず、直接的な観測を行ってその振る舞いの情報を得る必要がある。そこで大型放射光施設SPring-8を用いて、鶏卵中に置かれたナノ磁石の集合体に対して外部磁場を印加し、ナノ磁石の振る舞いについて、その時間変化をSPring-8の放射光で観察し追跡することを目的として、本実験を行った。放射光により、ナノ磁石が外部磁場により鶏卵中を移動することができることを観測できたことが明らかになった。