熱傷
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看護
救急・集中治療領域における教科書分析から捉えた熱傷の看護援助に関する教育内容の現状
牧野 夏子村中 沙織
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2020 年 46 巻 5 号 p. 199-205

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抄録

 本邦の熱傷診療は, 2009年にガイドライン公表, 2015年の改訂を経て標準化と質の向上が進められている. しかし熱傷看護教育は看護基礎教育, 卒後教育ともに十分ではないことが知られており, 特に重症熱傷治療に携わる看護師は困難を抱きやすい. 本研究の目的は, 看護基礎教育課程における救急・集中治療領域の教科書分析を通して熱傷の看護援助に関する教育内容の現状を明らかにすることである.
 方法は, CiNii Booksを用いて過去10年間の雑誌やビデオを除外した図書を対象に「熱傷看護」「救急看護」「集中治療看護」「急性期看護」「クリティカルケア看護」をキーワードとして検索し得られた241冊を概観した. そのうち, 研究報告書等を除外し改訂版がある図書は最新版を採用した結果, 131冊が選定された. 看護基礎教育で用いられる主要参考書・成書, テキストを教科書と定義し, 最終的に13冊が分析対象となった. 分析対象の図書から熱傷の看護援助に関する記述を抜粋し文脈単位ごとに抽出・要約したのち, 質的帰納的に分析した.
 熱傷の看護援助に関する記述がない6冊および入手困難であった1冊を除外した6冊の熱傷の看護援助に関する記述は187文脈単位が抽出され, 【異常の早期発見に留意した呼吸・循環管理】【回復促進のための栄養管理と早期リハビリテーション】【熱傷部・全身の感染予防対策】【熱傷に伴う身体的・精神的苦痛の緩和】【認知・精神機能の回復に対する具体的支援】【家族に対する病期に合わせた支援】の6項目に分類された.
 救急・集中治療領域において熱傷の看護援助に関する記述がある教科書は少なく, 内容に偏りは認めるものの患者への直接的なケアから家族看護まで広く記述されていた. 課題として, 教科書に掲載する内容の吟味と本研究結果を踏まえた卒後教育のあり方を検討する必要性が示唆された.

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© 2020 一般社団法人 日本熱傷学会
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