抄録
てんかん発作を起こした際に熱傷を受傷した症例は重症化しやすいことは知られている. 今回, 神経梅毒によるてんかん発作中に熱傷を受傷した,受傷機転がまれな症例を経験したため報告する.
症例は28歳, 女性. 4年前に梅毒血清反応陽性を指摘, 加療していたが, 通院を自己判断にて中断していた. 1年前より発症し, 当時原因不明であったてんかん発作に対しては近医より処方されていた抗てんかん薬を内服していた. 今回, ヘアドライヤーを使用中にてんかん発作を発症し, その熱風で左上腕に深達性Ⅱ度熱傷 (DDB) を受傷した. 入院後, 局所麻酔下に左上腕のデブリードマン, 分層植皮術を施行した. 入院時採血にて, 梅毒トレポネーマ抗体 (TPLA) 陽性, 非トレポネーマ脂質抗体 (以下RPR) 陽性であり, その後施行した髄液検査で髄液RPR陽性となり, 画像所見とあわせ総合的に神経梅毒の診断にいたった. 本症例の受傷機転でもあるてんかん発作は, 神経梅毒による症状と考えられた. 植皮の生着を確認し, 神経梅毒に対しペニシリンGによる治療を行った.
梅毒患者は増加傾向にあり, 若年層でのてんかん等の神経症状を機転とした熱傷患者を診察した際には, 梅毒の可能性も念頭に置いて治療を行うことが望ましいと考えられた.