本報告では, 皮膚移植に関する臨床研究の立案過程を解説する. さまざまな皮膚移植法が存在するなか, 人工真皮を用いた移植によって創の機能や整容を向上させる可能性が示唆されている. 従来, 人工真皮を用いた治療戦略では, 人工真皮の移植・生着確認ののちに自家分層植皮を行うという二期的手術が一般的であったが, 近年では自家網状分層植皮の表層に人工真皮の植皮を一期的に行うという手法, 人工真皮サンドウィッチ法が提案され, 臨床実用されている. しかし, その効果は証明されておらず, われわれはその有用性を評価するため多施設共同前向き観察研究を実施するにいたった. そこで, 本研究の立案・開始までの過程を紹介する. 研究立案期において, 人工真皮サンドウィッチ法の対象創と対照術式の設定に苦慮した. 最終的に, 期待される効果を総治療期間の短縮効果および採皮面積の縮小効果の2つに整理し検討した. 総治療期間の短縮効果を評価するために, 深部まで及ぶ皮膚欠損創を対象創とし, 人工真皮を用いる従来の二期的手術を対照術式とした. また, 採皮面積の減少効果を評価するために, 広範囲皮膚欠損創を対象とし, 低倍率網状分層植皮を対照術式とした. また, 術式選択に関して多くの交絡因子が存在することが考えられ, 皮膚移植対象創に関する過不足ない情報が何かを検討し, アウトカムの評価方法について深く議論したことが, 研究計画設定において非常に重要であったと考えられる. 本研究結果がつぎのランダム化比較試験へ繋がることを期待している.