【諸言】スマートフォンが発熱する危険性は周知されつつある. 今回われわれは, 睡眠中のスマートフォン稼働によるⅢ度熱傷の症例を経験した. いかなる条件下でスマートフォンがⅢ度熱傷にいたる熱源となりえるのか再現実験を行い検証した.
【症例】72歳, 女性. 睡眠中にスマートフォンが右肩甲部の下敷きとなり低温熱傷を受傷した. 前医で約5ヵ月間の外用加療が行われたが改善を認めず, 当科紹介となった. 右肩甲部のⅢ度熱傷と診断し, 局所皮弁による再建を行った.
【再現実験方法】自験例と同一機種を用意しアプリケーションの稼働・充電・保温の3条件を変えながら赤外線温度測定器で温度を計測した.
【結果】自験例の機種はアプリケーションを稼働した状態で最も発熱しやすく, Ⅲ度熱傷発生の臨界温度に達した.
【考察】スマートフォンのアプリケーション稼働の持続がⅢ度熱傷を引き起こす発熱の原因であることが示唆された.