Journal of Computer Aided Chemistry
Online ISSN : 1345-8647
ISSN-L : 1345-8647
指紋照合型SOMの開発と押収メタアンフェタミンのプロファイリングへの応用
錦織 理華牧野 由紀子越智  雪乃山下  典之岡本  晃典川下  理日人高原  淳一安永  照雄高木  達也川瀬  雅也
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2008 年 9 巻 p. 30-36

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抄録

我々は前報で、改良を加えたニューラル独立成分解析法(neural ICA)および5層砂時計型ニューラルネットワーク(HNN)を、不正に流通したメタアンフェタミンのプロファイリングに適用し、主成分分析(PCA)やカテゴリー主成分分析(CATPCA)、多次元尺度構成法(MDS)を適応した場合より、良好な分類結果が得られることを報告した。HNNは、非線形機械学習法の一つであり、前回の研究で使用したneural ICAも非線形な特徴を添加した手法である。この結果から、押収メタアンフェタミンのプロファイリングには、線形な手法より、非線形な手法が有効であると考えられる。このため今回、我々はKohonen自己組織化ニューラルネットワーク(SOM)法をプロファイリングに適用した。
 SOMは非線形分類手法として、近年頻用されている。しかし、SOMでは通常、勝者ニューロンの位置情報のみが分類に使用される。我々は敗者ニューロンの情報を生かし、情報の損失を避ける手法について検討した。初めに、各格子点の参照ベクトルをサンプルごとの指紋MAPとして視覚化した。このSOM指紋マップにより、多くの情報を視覚的に比較できるが、計量的な比較は難しい。そこで計量的な分類結果を得るため、参照ベクトルから得られた類似度行列にMDSを適用して比較した。
 合成経路特有の不純物の有無を比較することで、4つの主なメタアンフェタミンの合成経路(Nagai法、Leuckart法、Emde法、reductive amination法)をある程度特定することが可能であり、この情報を用いて結果を評価したところ、良好な分類結果を得ることができた。

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© 2008 日本化学会
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