Journal of Computer Aided Chemistry
Online ISSN : 1345-8647
ISSN-L : 1345-8647
9 巻
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  • 長谷川 清, 光山 倫央, 荒川 正幹, 船津 公人
    2008 年 9 巻 p. 1-7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/12
    ジャーナル フリー
    本論文では、ルールマイニング手法として知られているRough Set Theory (RST)を構造活性相関に応用することで、高活性に必要なルールが導けるかどうかを検証した。これまでルールマイニング手法としては、Inductive Logic Programming (ILP)が知られているが、学習の準備、特に、background knowledgeを事前に作成することが大変で、実際の応用は限定されていた。RSTはあいまいなものや粗いデータなどの不正確、不完全なものを類別するための理論である。これをルールマイニングの手法として用いる事で、あるサンプルと別のサンプルを区別するのに必要最小限の変数セット(reduct)を選択し、選択されたセットからルールを導くことが出来る。構造活性データとしては、Dihydrofolate reductase (DHFR)阻害剤を利用した。このデータセットは、これまで数多く解析され、構造要求性がよく知られている。得られたルールは、この構造要求性と類似しており、RSTの有効性を証明することができた。今回、母核構造が一定で活性値が定量的なデータで検証したが、多様な化合物を含むデータや活性値が不正確なデータへの応用も期待できる。
  • 小畑 繁昭, 後藤 仁志
    2008 年 9 巻 p. 8-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/19
    ジャーナル フリー
    計算化学技術による結晶構造解析は、機能材料や医薬品の開発など広範囲な研究分野において重要な役割が期待されている。一般に結晶計算では、計算対象となる結晶モデルを大きくするとより実在系に近づき、より高精度な計算結果を期待できるが、それに伴う分子間相互作用の計算量は爆発的に増加する。このため、利用可能な計算機の演算性能に応じて計算できる結晶モデルの大きさは制限されてしまう。そこで本研究では、我々が開発してきた結晶構造最適化プログラムKESSHOUの結晶計算法を、汎用分子計算プログラムCONFLEXに導入したCONFLEX/KESSHOUにおいて、分子間相互作用の計算部分に並列分散処理技術を適用することによって、結晶構造のエネルギー計算や構造最適化の効率的な高速化を実現した。また、結晶モデルの大規模化に伴う分子間相互作用エネルギーの加算誤差を最小限に抑えるため、Kahanの加算アルゴリズムを適用した。並列分散計算環境を利用して、アスピリン結晶の構造最適化を行なったところ、その並列化効率が90%以上に達することを確認した。また、結晶モデルの大きさ(有効結晶半径)に依存した結晶エネルギー揺らぎを調べたところ、有効結晶半径80A以上の結晶モデルの結晶エネルギーは10-3 kcal/mol以内の精度で求められることが分かった。
  • 西川 真, 小坂井 晋作, 仙石 康雄, 栗田 典之
    2008 年 9 巻 p. 17-29
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/23
    ジャーナル フリー
    転写制御タンパク質であるラクトースリプレッサー(LacR)は、Ligand依存型タンパク質であり、結合するLigandの種類に依存してDNAの転写を抑制あるいは促進する。本研究では、Ligandの結合によりLacRの構造と電子状態がどのように変化するかを、古典分子力学計算、及び半経験的分子軌道計算により解析し、Ligand結合によりLacRとDNAの結合が変化する原因の解明を試みた。具体的には、LacR単体の構造、インデューサであるIPTGが結合したLacR-IPTG複合体構造、アンチインデューサであるONPFが結合したLacR-ONPF複合体構造を、古典分子力場AMBERを用いて水中で最適化し、最適化した構造の電子状態を半経験的分子軌道計算により解析した。その結果、LacRとLigandの結合にはLigand周辺の結晶水が重要な働きをしていることが明らかになった。また、LigandがLacRに結合することにより、LacRのDNA結合部位の構造が変化し、LacRとDNA間の結合エネルギーが変化することも明らかになった。
  • 錦織 理華, 牧野 由紀子, 越智  雪乃, 山下  典之, 岡本  晃典, 川下  理日人, 高原  淳一, 安永  照雄, 高木  達也 ...
    2008 年 9 巻 p. 30-36
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/20
    ジャーナル フリー
    我々は前報で、改良を加えたニューラル独立成分解析法(neural ICA)および5層砂時計型ニューラルネットワーク(HNN)を、不正に流通したメタアンフェタミンのプロファイリングに適用し、主成分分析(PCA)やカテゴリー主成分分析(CATPCA)、多次元尺度構成法(MDS)を適応した場合より、良好な分類結果が得られることを報告した。HNNは、非線形機械学習法の一つであり、前回の研究で使用したneural ICAも非線形な特徴を添加した手法である。この結果から、押収メタアンフェタミンのプロファイリングには、線形な手法より、非線形な手法が有効であると考えられる。このため今回、我々はKohonen自己組織化ニューラルネットワーク(SOM)法をプロファイリングに適用した。
     SOMは非線形分類手法として、近年頻用されている。しかし、SOMでは通常、勝者ニューロンの位置情報のみが分類に使用される。我々は敗者ニューロンの情報を生かし、情報の損失を避ける手法について検討した。初めに、各格子点の参照ベクトルをサンプルごとの指紋MAPとして視覚化した。このSOM指紋マップにより、多くの情報を視覚的に比較できるが、計量的な比較は難しい。そこで計量的な分類結果を得るため、参照ベクトルから得られた類似度行列にMDSを適用して比較した。
     合成経路特有の不純物の有無を比較することで、4つの主なメタアンフェタミンの合成経路(Nagai法、Leuckart法、Emde法、reductive amination法)をある程度特定することが可能であり、この情報を用いて結果を評価したところ、良好な分類結果を得ることができた。
  • 池田 達彦, Md. Altaf-Ul-Amin , Aziza Kawsar Parvin , 金谷 重彦, 米谷 力, 福崎 英一郎
    2008 年 9 巻 p. 37-46
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/16
    ジャーナル フリー
    近赤外分光法は食品、細胞組織などに含まれる多成分からなる混合体の全体的特徴を把握する方法として様々な分析に応用されている。本研究では、お茶の品質を近赤外分光スペクトルから推定することを目的としてケモインフォマティクス法を検討した。まずはじめに、1000-2500 nmにおける吸収スペクトルを標準正規化変換(Normal standard variate transformation)により前処理を行い、微分係数による特徴表現した後、スピアマン相関により、お茶の品質と相関のある波長を選択したところ、10個の波長がお茶の品質と0.90の相関が得られた。PLS法により、これらの10個の波長における強度による十分に信頼できるモデルを作成することに成功した。近赤外分光法における微分係数による特徴表現の重要性についての検討も行った。
  • 田上 歩, 石橋 延裕, 加藤 太一郎, 田口 尚貴, 望月 祐志, 渡邉 博文, 伊藤 三香, 田中 成典
    2008 年 9 巻 p. 47-54
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/24
    ジャーナル フリー
    フラグメント分子軌道(FMO)法は、生体高分子をフラグメントに分割することにより計算時間を大幅に短縮し、タンパク質やDNAなどの巨大分子系全体を量子論的に扱う計算方法として近年注目を集めている。本研究ではその中の1手法である多層FMO(MLFMO)を用いて、ホタルルシフェラーゼの励起状態計算を行った。計算に用いた構造は、野生型(緑色に発光)と橙色、赤色に発光する変異体の計4つである。発光体オキシルシフェリンと活性中心を含む比較的小規模な系で計算を行い、その結果4つの構造に対する発光エネルギーを実験値と相関して再現することに成功した。タンパク質の全体構造においても励起状態計算を行い、実験値と計算値の差を比較したところ、4つの構造において最大でも0.27eVの差と、実験値を定量的に再現することにも成功した。本報告ではその詳細と、発光色制御における周辺環境場の重要性について述べる。
  • 蓬莱 尚幸, 西岡 孝明
    2008 年 9 巻 p. 55-61
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/28
    ジャーナル フリー
    リン脂質の構造式の自動合成のためのアルゴリズムとツールを提案する。このツールでは、リン脂質の可変部分を文字列でコンパクトかつシステマティックに入力し、その構造式をMolfile形式で出力する。出力されるMolfileには、原子間の結合のみでなく、構造を重なりなく描画するための二次元座標も記述される。このツールは、任意の長さと任意の二重結合数のグリセロリン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルギリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン)とスフィンゴリン脂質をカバーする。また、各二重結合について、その位置とシス-トランス異性を任意に指定できる。
  • 山口 徹, 隅本 倫徳, 堀 憲次
    2008 年 9 巻 p. 62-69
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/03
    ジャーナル フリー
    分子軌道(MO)計算や密度汎関数理論(DFT)計算により詳細な反応解析を行うことが可能であるが、その結果はあくまでも真空中絶対零度の条件下のものである。しかしながら、ほとんどの反応は水、アセトニトリル、アルコールなどの溶媒を用いて実施される。従って、実際の実験に即した形で化学反応を解析するためには、溶媒効果を含んだ計算を行うことが必要である。この効果を含んだ計算を行うには、SCRF計算や分子動力学(MD)法などが利用されてきた。前者は溶媒のバルクの効果のみを取り入れる方法であるため、溶媒分子個々の性質は理解できない。一方後者は、その計算にしばしば古典力場を用いるが、この場合精度の高い計算結果は期待できず、有機合成に用いる溶媒への対応が困難である。我々は、化学反応における溶媒の影響を量子化学的に評価するために、QM/MC法(量子化学計算を用いたモンテカルロシミュレーション)による溶媒効果の解析を行うプログラムの開発し、酢酸メチルのアルカリ加水分解に適用した。反応解析にMP2/6-31++G**レベルの計算を、MCシミュレーションに必要なエネルギーはPM3法で算出したところ(この計算はQM/MC(MP2/6-31++G**,PM3)と表わされる)、実験結果を良好に再現する結果が得られた。
  • 荒川 正幹, 宮尾 知幸, 船津 公人
    2008 年 9 巻 p. 70-80
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/11
    ジャーナル フリー
    医薬品開発の効率化のためには、その初期段階において候補化合物のドラッグライクネスを推定することが重要である。そこで本研究ではドラッグライクネスモデルの構築を行った。comprehensive medicinal chemistry (CMC)およびavailable chemicals directory (ACD)の両データベースから抽出した医薬品、非医薬品をトレーニングデータとし、Dragonによる構造記述子を用いてsupport vector machine (SVM)による識別モデルを構築した。SVMモデルのパラメータ最適化のため、5-foldクロスバリデーションによる正解率を指標としたグリッドサーチを行い、トレーニングデータに対する正解率87.65%、テストセットに対する正解率79.40%のモデルを得ることに成功した。また、ドラッグライクネスモデルの可視化を目的とし、generative topographic mapping (GTM)およびself-organizing map (SOM)を用いた非線型写像を行った。非線型写像においては、写像の精度を高めると同時に写像の複雑化を抑えることが重要であるが、これまで写像の複雑性を評価するための指標は知られていなかった。そこで、写像の非線型性を評価するための指標としてroot mean squared error of midpoint (RMSEM)を提案し両手法の比較を行った。
  • 田中 章夫, 河合 隆, 松本 努, 高畠 哲彦, 岡本 秀穗, 船津 公人
    2008 年 9 巻 p. 81-91
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/27
    ジャーナル フリー
    合成反応設計システムAIPHOSの合成ルート提案を効率的に進めるために、化合物の戦略部位(前駆体を発生させるための切断、再結合させる部分構造)の合成戦略的な優先順位付けの評価手法を開発した。本報告では反応データベースに登録されている反応式の生成物と反応部位の相関関係を*Logistic Regression Analysisで解析し、戦略部位の合成戦略上の重要度を評価する手法について報告する。出典が異なる反応データベース間でも相関式は類似していた。また、相関式からデータベースに登録されている反応の反応中心は化合物構造の中心近くで結合数は少なく切れやすい結合である傾向が高いことが分かった。
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