2022 年 19 巻 1 号 p. 1-7
本研究は,森林映像が前頭前野活動に与える影響を明らかにすることを目的とし,近赤外分光法(NIRS)による前頭前野oxy-Hb濃度とRE尺度によるリラックス状態の変化,視聴後の自由記載から検討した.対象は健康な女子大学生21名であり,すべての被験者に,森林映像と人工映像の2条件をランダムな順序で視聴させた.映像視聴中と視聴後における条件間比較では有意な差はみられなかった.各条件の視聴中・後比較では,森林映像は左前頭前野oxy-Hb濃度が有意に増加した.RE尺度では,人工映像は「不安-安心」,「束縛的-解放的」,「不快-快」の3項目が有意に低下し,森林映像は「気分が高ぶっている-のんびりしている」,「力が入る-力が抜ける」,「不安-安心」,「束縛的-解放的」,「不快-快」に有意な改善がみられた.以上より,森林映像の視聴は主観的にはリラックス感を高めるが,生理的には左前頭前野を活性化させる可能性が示唆された.